VTuber文化
【モノリス法律事務所】VTuberが誹謗中傷やネトストに遭ったときはどうすれば良い?声明文のアドバイスはしてもらえる?弁護士に相談するときのポイントを解説【後編】
ものりす君
今回の記事では、前回に引き続き、VTuberとして活動していく上で浮かぶ可能性のある疑問点について、シチュエーション別に聞いてみました!
▼前編はこちら!▼
【モノリス法律事務所】VTuberが弁護士に相談するとき知っておきたいこととは?相談するときの判断基準や流れ、用意しておくべき証拠について【前編】
▼中編はこちら!▼
【モノリス法律事務所】VTuberが契約時に直面する個人情報の問題と対処法とは?画像の引用やゲームのパロディの著作権は大丈夫?シチュエーション別に解説【中編】
誹謗中傷
誹謗中傷に関わる刑事法と民事法について
Q7.名誉毀損罪や侮辱罪という言葉を聞いたことがあります。 誹謗中傷に関わる法律について、詳しく教えていただきたいです!
A7. これはちょっと難しい問題なんだけど、実は刑法上の名誉毀損罪・侮辱罪と、民事上の名誉権侵害・名誉感情侵害(侮辱)とは、要件が微妙に違うんだ!
①事実を摘示することにより対象者の社会的評価を低下させる場合
②事実を摘示することなく(例えば、意見論評により)対象者の社会的評価を低下させる場合
③事実を摘示せず対象者の社会的評価は低下しないが、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合
の3つのケースに分けて説明するね。
①は、民事上は名誉毀損として不法行為となり、刑事上は名誉棄損罪になるよ。②は、民事上は名誉毀損として不法行為となり、刑事上は侮辱罪となり得るということだね。③は、民事上は名誉感情侵害(侮辱)として不法行為となることがあるけど、刑事上は犯罪にはならないんだ。
例えば、配信のコメントに「バカ!」と1回だけ書き込むことは、侮辱罪にはならないんだ。そのコメントが社会的評価を低下させるとは考えにくいからね。ただし、コメントの内容が社会通念上許容される限度を超える場合には、配信者は名誉感情を侵害されたとして相手の不法行為責任を追及できることもあるんだ。
でも、気を付けないといけないのは、書かれた言葉の内容だけでは判断できないっていうことなんだ。その言葉がどこに書き込まれたかとか、何回書き込まれたかとか、裁判ではいろんな事情を総合的に判断されるんだ。
つまり、配信のコメント欄で1回だけ「バカ!」って書いただけじゃ名誉毀損罪や侮辱罪にはならないんだけど、「じゃあ、どんな言葉がダメなの?」とか、「何回繰り返したらアウトなの?」っていうのは一概には言いにくいんだ。その線引きは難しいから、経験豊富な弁護士に相談してみてね。
非公開な場での誹謗中傷について
Q8. 名誉毀損罪や侮辱罪は「公然性」がポイントで、DMなどの非公開な場で誹謗中傷を受けた場合は成立しないと聞いたのですが、本当ですか?
A8. 確かに「公然性」は名誉毀損罪や侮辱罪の構成要件だから、これを満たさないと犯罪は成立しないんだけど、最重要ポイントは別にあるんだ。
厳密にいうと、「公然性」っていうのは、不特定もしくは多数の人に対するものとされていて、これは特定少数人に対するものであっても、そこから不特定多数人に伝播する可能性があれば「公然性がある」に該当するとされているんだ。詳しくは下記の記事を読んでみてね。
じゃあ、「公然性がない」場合は諦めないといけないってこと!?というと、そういうわけでもないんだ。前述のように、民事と刑事で微妙に定義が異なっていて、「公然性」がなければ刑事上の犯罪にはならないものの、民事上の名誉感情侵害に該当するパターンもあるよ。なぜなら「公然性」というのは民法上、名誉感情侵害の不法行為の要件とされていないからなんだね。
この判断はすごく難しいから、経験豊富な弁護士にまずは相談してみることをオススメするよ。
ストーカー行為
ネトストの判断基準について
Q9. ネトスト(ネットストーキング)で困っている場合、どのようなラインから相談するのが良いのでしょうか?また、例えば、「家を特定した」という嘘をつかれた場合もストーカーとみなすことはできるのでしょうか。
ストーカー規制法で対応できる場合
A9. ストーカー規制法上の犯罪や警告・禁止命令の対象となる行為は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」であるものに限られているんだ。だから、このような目的が明らかにないようなケースでは、ストーカー規制法で対応することは難しいから、次の章「ストーカー規制法で対応できない場合」を読んでみてね。
具体的に、ストーカー規制法上禁止されている行為には次のものがあるから覚えておいてね。
ア つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
イ 監視していると告げる行為
ウ 面会や交際の要求
エ 乱暴な言動
オ 無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS・文書等
カ 汚物等の送付
キ 名誉を傷つける
ク 性的しゅう恥心の侵害
ケ GPS機器等を用いて位置情報を取得する行為
コ GPS機器等を取り付ける行為等
これらの行為は犯罪(同法2条4項、18条)や警告・禁止命令(同法4条及び5条)の対象になるので、もし心当たりがあるようなら警察に相談してみてね。ケースによってはサイバー犯罪相談窓口も活用してみよう。
例えば、「家を特定した」という嘘をつかれた場合、これは上記イ(法律の条文では「その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと」って定められているよ)に該当する可能性があるので、警察に相談してね。たとえ、特定をしたことが嘘であったとしても、被害者からすれば、それが本当かどうか判断できないし、条文からも、特定をしたことの真偽はここでは関係なくて、「行動を監視していると思わせるような事項を告げ」るだけでも該当するんだよ。
ストーカー規制法で対応できない場合
もしストーカー規制法で対応できないケースだとしても、刑法上の犯罪になる場合もあるよ。例えば、加害者がSNSに投稿した内容が名誉権侵害に該当する場合は名誉毀損罪、不当な要求をすれば強要罪、害悪の告知をすれば脅迫罪、金銭の要求をすれば恐喝罪になることもあるからね。
また、その投稿が名誉権を侵害するものであれば名誉権侵害として、被害者のプライバシーを侵害するものであればプライバシー侵害として、民事上の手続として「発信者情報開示命令」等の手続で加害者を特定することも可能だよ。ネット上の名誉権侵害が絡むネトストなら、弁護士に依頼してまずは加害者を特定するという手もあるよ。
それでも警察が動いてくれないような場合には、弁護士に告訴状の作成を頼むこともできるよ。ストーカー行為があまりにもひどくて危険を感じる場合には、弁護士に依頼して裁判所に接近禁止仮処分の申立を行うこともできるんだ。ほかにも、弁護士から加害者に対して警告文を送ることや、代理人として加害者と交渉することも効果があることもあるんだ。
まずは警察に相談することが最優先なんだけど、弁護士がお役に立てることもあるから、ケースによっては弁護士への相談も検討してみてね。
声明文
声明文について
Q10. トラブルに巻き込まれた際、声明文を投稿するVTuberもいます。適切な文章を書ける自信がないのですが、そのようなことに関する相談をしても大丈夫ですか?
A10. 大丈夫!モノリス法律事務所でも「どういう声明文を作ったらよいですか?」という相談を受けて、アドバイスした実績もあるよ。
被害者だったはずなのに、声明文を出したことでさらに炎上したり、名誉毀損をしてしまったりなんていうこともあるから、慎重に考えたいよね。ただ、アドバイスはできるけど、声明文で炎上するリスクについての最終的な判断はクライアントご自身にしていただいています。
ものりす君からのメッセージ
「モノリス法律事務所は、ネット上のトラブルやインフルエンサーのマネジメントなどに豊富な経験をもつ法律事務所なんだ。誹謗中傷についても、たくさんの実績があるよ!
VTuber活動をしていると、誹謗中傷や炎上などのトラブルに巻き込まれることもめずらしくないよね。法的な手続きで対処できることもあるんだよっていうことをまずは知ってほしいな。一人で悩まずに、弁護士と一緒に解決していきましょう!」
まとめ
今回の記事では、誹謗中傷やストーカー行為など、VTuberとして活動していく中で巻き込まれる可能性のあるトラブルと、その対処法について聞いてみました。
誹謗中傷やストーカー行為への対処にはさまざまなパターンがあり、状況に応じて変化することがわかりました。必要に応じて、弁護士や警察に頼りながら、解決していきましょう!
この記事に関わった人
藍波
編集
VTuber知識ゼロの学生ライター。VTuber業界に精通しているluco株式会社の社員たちの監修の下、初心者目線でわからなかったことを記事にまとめ、発信している。最近はお気に入りのモデルを手に入れ、自分が配信活動することを妄想するのが趣味。
夢乃ほのか
編集
ちょっぴり大人な社会人アイドルVtuber。Vtuberとしての活動の傍ら、「バーチャル社員」としてluco株式会社に勤務しており、二足のわらじでバーチャル生活をエンジョイ中。これまでのオタク人生を生かしたオタク特化の雑談配信が人気。「最推しじゃなくていい。あなたの忘れない人にしてくれませんか?」