VTuber文化

【モノリス法律事務所】VTuberが契約時に直面する個人情報の問題と対処法とは?画像の引用やゲームのパロディの著作権は大丈夫?シチュエーション別に解説【中編】

ものりす君

前回の記事では、モノリス法律事務所のものりす君をお迎えし、弁護士に相談するまでの基本について伺いました。

▼前編はこちら!▼

【モノリス法律事務所】VTuberが弁護士に相談するとき知っておきたいこととは?相談するときの判断基準や流れ、用意しておくべき証拠について【前編】

今回は、VTuberとして活動していく上で浮かぶ可能性のある疑問点について、シチュエーション別に聞いてみました!

契約

契約で伝える個人情報について

Q4. 企業主催の企画に参加する際、契約書に本名や住所を書くことを求められました。身バレ防止のために、詳しい個人情報はできるだけ書きたくないと思ってしまいます。

A4. 契約書に氏名と住所がないと誰が契約したのかを特定できないから、自分が契約者であることを証明できない可能性があるんだ。契約には自分にとって有利な内容もあると思うけど、争いになったときには自分がその契約者であることが証明できないといけないんだよ。だから、最低限でも氏名と住所は必要なんだ…!

逆に、それ以外の個人情報については書く必要はないとも言えるよ。ただし、マイナンバーについては、源泉徴収が必要な契約(雇用契約、業務委託契約等)の場合には書かないといけないんだ。

著作権

画像などの引用について

Q5. VTuber活動をしていく上で、著作権についてもかなり気をつけなければいけません。例えば、商品紹介で商品画像をネットから引用する際、引用元を書かなければいけないのですか?

A5. 著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1項第1号)なんだけど、なにが著作物に該当するかについては事案ごとに考える必要があって、実はとっても難しい問題なんだ。

他人の著作物を利用する場合には、原則として著作者本人から許諾を受ける必要があるよ。例外として、著作権法上の「引用」に該当する場合には、本人の許諾がなくとも利用可能なんだ。

引用は、簡単にまとめると、以下の条件をすべて満たしている必要があるよ。

ア:既に公表されている著作物であること
イ:「公正な慣行」に合致すること
ウ:宣伝のための「正当な範囲内」であること
エ:引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
オ:カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
カ:引用を行う「必然性」があること
キ:「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)

要件がこんなにあるから、「引用元を書いておけば大丈夫!」っていうわけじゃないから、気を付けてね!

なお、引用の場合であってもトリミング等の加工はNGだよ!なぜなら、著作権者の許諾なく翻案(元の著作物の特徴を維持したうえで、その著作物を改変する行為)をすることはできないからなんだ。

また、商品紹介では、著作権のほかにも、企業のロゴ等の商標権の侵害にも注意が必要だよ。

オマージュやパロディについて

Q6. VTuberの配信用画像素材を販売したいと考えています。ゲーム配信に使えそうな、特定のゲームを連想させるような素材をつくったら便利だなと思ったのですが、「〇〇風」の素材をつくって販売するのは法的に問題ありますか?

A.6 これはケースバイケースでとっても難しい問題だから、販売前に弁護士に相談することをオススメするよ。

著作権侵害とは

一般論としては、この場合、次の3つの条件に当てはまると著作権侵害になっちゃうんだ。

①元となった「特定のゲーム」の画像が著作物に該当し(A5参照)
②「〇〇風」の素材が著作物に依拠して作成したものであり
③「〇〇風」の素材が著作物に類似していた

「特定のゲーム」である以上は①を満たし、「〇〇風」の素材をつくった以上は②を満たすんだ。たまたま似ている場合は②を満たさないんだけど、「〇〇風」って言っている以上、たまたまじゃなくてそのゲームをもとにしている、つまり「依拠」しているっていうことになっちゃうよね。なので、この場合は、著作権侵害かどうかは、③の類似性があるかどうかで判断することになるよ。

少し難しい話になるけど、過去の裁判例の話をするね。

③の類似性の判断基準は、判例上「言語の著作物の翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。(中略)著作権法は、思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから、既存の著作物に依拠して創作された著作物がアイディア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、翻案にはあたらない。」(最判平成13年6月28日)とされているんだよ。

つまり、裁判では「表現上の本質的特徴を直接感得することができるか」で類似性を判断することになるんだけど、これは言語以外についても同じように考えられているんだ。

何が「表現上の本質的特徴」なのかというのは、実はかなり難しい問題なんだ。裁判では、共通する部分がごく一般的にみられるありふれたものか、特徴となる部分が異なっているかという観点から判断されることがあるけど、その判断は難しいよね。

だから、この場合は、あらかじめ著作権者から許諾をもらっておくのが一番良いね。

同人誌について

似たような問題として、「同人誌は著作権侵害?」という疑問もよく聞くよね。結論から言うと、同人誌も著作権侵害に該当するよ。でも、同人誌は、「原作のまま」であることや「著作権者の利益が不当に害されることとなる場合」には該当しないから(著作権法123条2項)、同人誌による著作権侵害は「親告罪」になるんだ。

「親告罪」っていうのは、被害者が告訴をしない限りは起訴されない犯罪のことだよ。だから、同人誌については著作権者が告訴していないだけで、著作権を侵害していることに変わりはないんだ。実際に、過去には、著作権者から告訴されて事件になったケースもあるんだよ。オマージュやパロディだから大丈夫!っていうわけじゃないから、気を付けてね。

ものりす君からのメッセージ

「VTuberとして活躍していくには、いろんな契約は避けては通れないものだよね。一緒に活動する仲間ともきちんと契約を結んでおいたほうがいいし、事務所に所属することもあるし、トラブルを防止するために契約ってとっても大事なんだ。でも、法律はわからないし、どうしたらいいの?っていう方も多いよね。

今回は、そんな契約のことと、コンテンツを作るときに気になる著作権についてもお答えしたよ!一人で悩まずに、弁護士と一緒に解決していきましょう!」

まとめ

今回の記事では、契約時の個人情報についてや画像の著作権について、VTuberが活動していく上で直面する可能性のある懸念点を中心に聞いてみました。

トラブルを防ぐためには、クリアしておかなければならない条件を事前に確認することが大切です。ぜひこの記事をチェックし、心配なときは弁護士にも確認してみることで、トラブルを防いでいきましょう!

ものりす君への相談シリーズは、今後【後編】に続く予定です。お楽しみに!

この記事に関わった人

ものりす君

ものりす君

執筆

VTuber法務チームの弁護士もいる、モノリス法律事務所のパラリスガル(法律見習い)です🐿️法律のことはまだまだ勉強中だけど僕もVtuberさんの力になれたらうれしいな!

藍波

藍波

編集

VTuber知識ゼロの学生ライター。VTuber業界に精通しているluco株式会社の社員たちの監修の下、初心者目線でわからなかったことを記事にまとめ、発信している。最近はお気に入りのモデルを手に入れ、自分が配信活動することを妄想するのが趣味。

夢乃ほのか

夢乃ほのか

編集

ちょっぴり大人な社会人アイドルVtuber。Vtuberとしての活動の傍ら、「バーチャル社員」としてluco株式会社に勤務しており、二足のわらじでバーチャル生活をエンジョイ中。これまでのオタク人生を生かしたオタク特化の雑談配信が人気。「最推しじゃなくていい。あなたの忘れない人にしてくれませんか?」

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画像デザイン

かわいいたのしいが大好きなデザイナー。「配信がちょっと楽しみになる」をコンセプトに、VTuber向けのロゴ、配信画面、配信素材を作っている。そんなデザイン経験を活かし、lucoではビジュアルデザインを担当。口癖は「かわい〜〜!!!天才!!✨」

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